
「走ると太ももの裏が痛い」
「ダッシュ中に太ももの裏を痛めた」
「肉離れをしたけれど、いつから競技に復帰できる?」
「大会に向けて、再発しないか不安」
このような悩みを抱えるスポーツ選手は少なくありません。
今回は、当院に来院された高校生・陸上部のハムストリングス肉離れの症例をもとに、競技復帰までの流れを紹介します。
ハムストリングスの肉離れとは?
ハムストリングスは、太ももの裏側にある筋肉の総称です。
陸上の短距離走やジャンプなど、強く走ったり、急激に筋肉を伸ばしたりする動作では大きな負荷がかかります。
研究でも、ハムストリングスの肉離れはスプリントを伴う競技で起こりやすく、競技復帰後の再発も課題とされています。
今回の症例
今回の患者様は、10代の高校生男性で陸上部。400mと走り幅跳びを専門としていました。
発症は来院の2日前。スプリント中に左太ももの裏に「ブツン」という感覚があり、その後も走ると痛みが出る状態でした。
初回の評価では、ハムストリングスの状態や筋肉の伸び方を確認し、SLR(下肢伸展挙上テスト)などの筋肉の伸長テストも行いました。
SLRでは約40度付近から痛みが強くなり、局所には熱感があり、触れるだけでも痛みがある状態でした。
これらの状態から、ハムストリングスの肉離れが疑われる状態と考えました。
痛みが強い時期は、無理に動かさない
初期は炎症症状が強かったため、まずは状態に合わせて物理療法などを行い、症状を落ち着かせることを優先しました。
その後、状態を確認しながらストレッチやマッサージなどを取り入れ、少しずつ筋肉の動きを取り戻していきました。
大切なのは、痛みが残っている状態で無理にダッシュや大会に出場しないことです。
ハムストリングスの肉離れでは、競技復帰の判断に「痛みがないこと」だけでなく、筋力や柔軟性、実際の競技動作などを確認することが重要とされています。

競技復帰に向けて、動きまで確認
症状が落ち着いて運動ができるようになってからは、股関節の使い方や足関節の硬さ、ダッシュフォームなども確認しました。
ハムストリングスだけを見るのではなく、実際に走る動作の中でどのように身体を使っているのかを確認することも、今回の症例では重要だと考えました。
その後、徐々にダッシュの強度を上げていき、痛みが出ない範囲で競技動作に近づけていきました。
今回の経過
受傷後1〜2週間は炎症症状や運動時の痛みがありました。
約3週間経過した頃から少しずつ痛みが減り、5割程度のダッシュでは痛みが出ない状態になりました。
そこから股関節の動きや運動機能の改善を行い、徐々にダッシュの強度を上げていきました。
最終的には8割程度のダッシュでも痛みが出にくい状態となり、大会にも出場できるまで回復しました。
競技復帰後も、今後陸上競技を続けていくことを考え、再発予防を目的とした運動にも取り組みました。
研究からも「段階的な復帰」が重要
ハムストリングスの肉離れについては、リハビリテーションの進行や競技復帰の基準について多くの研究があります。
システマティックレビューでは、リハビリを進める際に痛みの状態を確認しながら、臨床評価や運動パフォーマンスを用いて競技復帰を判断する方法が多く報告されています。
また、ハムストリングスの肉離れは競技復帰後に再発することがあり、復帰を急ぐことが再発につながる可能性も指摘されています。
そのため、「痛みが減ったからすぐに全力で走る」のではなく、軽い運動→ジョギング→ダッシュ→競技特有の動作というように、段階的に負荷を上げていくことが大切です。

当院で大切にしていること
今回の症例を通して感じたのは、痛みが減ったことだけを基準に競技復帰を判断しないことの重要性です。
大会が近いと、「早く復帰したい」という気持ちが強くなるのは当然です。
しかし、途中で無理をしてしまうと、再び痛めてしまう可能性があります。
そのため当院では、症状の状態を確認しながら、筋肉の柔軟性、股関節や足関節の動き、筋力、そして実際のダッシュや競技動作まで段階的に確認していくことを大切にしています。
まとめ
ハムストリングスの肉離れでは、
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痛みが強い時期は無理をしない
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症状に合わせて少しずつ運動を再開する
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筋力や柔軟性だけでなく、股関節や足関節の動きも確認する
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ダッシュなど競技動作を段階的に取り入れる
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再発予防まで考えてリハビリを行う
ことが重要です。
スポーツ選手にとって、できるだけ早く競技に戻りたいという気持ちは自然なものです。
だからこそ、焦って復帰するのではなく、痛みや身体の状態を確認しながら、一歩ずつ競技復帰を目指すことが大切です。
太ももの裏の痛みや、肉離れ後の競技復帰についてお悩みの方は、一度専門家にご相談ください。
【この記事の執筆者】
田所(たどころ)
<所有資格>
柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、睡眠健康指導士
参考文献
(1)Heiderscheit, Bryan C et al. “Hamstring strain injuries: recommendations for diagnosis, rehabilitation, and injury prevention.” The Journal of orthopaedic and sports physical therapy vol. 40,2 (2010): 67-81. doi:10.2519/jospt.2010.3047
Available at:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20118524/
(2)van der Horst, Nick et al. “Return to Play After Hamstring Injuries: A Qualitative Systematic Review of Definitions and Criteria.” Sports medicine (Auckland, N.Z.) vol. 46,6 (2016): 899-912. doi:10.1007/s40279-015-0468-7
Available at:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26767837/
(3)Erickson, Lauren N, and Marc A Sherry. “Rehabilitation and return to sport after hamstring strain injury.” Journal of sport and health science vol. 6,3 (2017): 262-270. doi:10.1016/j.jshs.2017.04.001
Available at:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30356646/





















