「急に腰が痛くなって動けない」
「重たいものを持ち上げようとしたら腰に痛みが走った」
「前かがみになると腰が痛い」
このような症状はありませんか?
突然強い腰の痛みが出る状態は、一般的に「ぎっくり腰」と呼ばれます。当院でも、重たいものを持ち上げたときや、前かがみの姿勢が続いたあと、何気なく身体を動かしたときに痛みが出たというご相談を多くいただきます。
ぎっくり腰では、痛みのある腰だけでなく、股関節の動きや日常生活での身体の使い方にも目を向けることが大切です。今回は、当院での対応と研究報告を交えながら解説します。

ぎっくり腰とは?
ぎっくり腰は、急に起こる強い腰痛を指す一般的な呼び方で、医学的な診断名ではありません。接骨院などでは「急性腰痛」と呼ぶことが多いです。
腰の筋肉や関節など、さまざまな組織が関係する可能性がありますが、症状だけで原因を特定することは難しい場合があります。また、腰椎椎間板ヘルニアなどの疾患や、神経に関係する症状が隠れているケースもあるため、慎重な評価が必要です。
当院では、まず次のような点を確認します。
- 何をしているときに痛みが出たのか
- 腰のどのあたりが痛むのか
- 前かがみや立ち上がりなど、どの動作で痛みが出るのか
- 脚の痛みやしびれ、力の入りにくさがあるか
こうした情報をもとに、症状の状態を確認し、必要に応じて医療機関への受診をご案内します。
腰だけでなく、股関節の動きにも注目
当院では、ぎっくり腰の患者様に対して、腰の状態だけでなく股関節の動きや太ももの筋肉の柔軟性にも注目しています。
股関節は、歩く、しゃがむ、物を持ち上げるといった日常動作で重要な役割を担っています。股関節の動きが制限されている場合、動作によっては腰や骨盤の動きで補うことがあります。
そのため、腰の痛みが落ち着いてきた段階で、股関節の可動域や筋肉の状態を確認し、必要に応じてストレッチやトレーニングを取り入れています。
ただし、股関節の硬さがぎっくり腰の直接的な原因だと断定することはできません。腰痛と股関節の動きには関連が報告されていますが、研究結果には限界もあります。大切なのは、一人ひとりの身体の状態に合わせて評価することです。

股関節へのアプローチと腰痛に関する研究
腰痛に対して股関節のストレッチや筋力トレーニングを行うことは、研究でも検討されています。
2023年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、腰痛のある508人を対象とした8件のランダム化比較試験を分析しました。その結果、股関節の筋力トレーニングやストレッチを腰痛に対する運動療法と組み合わせることで、短期的な痛みや日常生活の動作に関する問題が軽減する可能性が示されました。
また、2023年の別のシステマティックレビューでも、腰痛に対する治療に股関節の筋力トレーニングを加えることで、痛みや機能障害の改善が報告されています。
これらの研究から、腰痛への対応では腰だけでなく、股関節の動きや筋力にも注目する意義があると考えられます。
ただし、研究の対象は腰痛全般であり、ぎっくり腰に特化した結果ではありません。また、改善効果に関する研究の確実性には限界があるため、すべての患者様に同じ効果が得られるとは限りません。
当院でも、痛みの程度や身体の状態を確認したうえで、必要に応じて股関節のストレッチやトレーニングを取り入れています。
参考文献
- Ceballos-Laita L, et al. The effectiveness of hip interventions in patients with low-back pain: A systematic review and meta-analysis. Brazilian Journal of Physical Therapy. 2023;27(2):100502.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37037144/ - Effect of Hip Muscle Strengthening Exercises on Pain and Disability in Patients with Non-Specific Low Back Pain—A Systematic Review. Sports. 2023;11(9):167.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37755844/
ぎっくり腰への施術と、痛みが落ち着いてからの運動
ぎっくり腰の直後は、痛みが強く、普段どおりに動くことが難しい場合があります。当院では、痛みの程度や身体の状態を確認し、必要に応じて電気施術などを取り入れながら、症状に合わせた対応を行います。
痛みが強い時期は無理にストレッチやトレーニングを行わず、まずは負担を調整することが大切です。
痛みが落ち着いてきたら、股関節のストレッチや筋力トレーニングなどを段階的に取り入れ、日常動作を行いやすい身体づくりを目指します。
また、強い痛みがあるからといって、長期間ずっと寝たままで過ごすことが望ましいとは限りません。可能な範囲で日常生活の動作を続け、痛みに合わせて少しずつ活動量を戻していくことが一般的に勧められています。

自宅でできるセルフケア
痛みが落ち着いてきたら、無理のない範囲で短時間のウォーキングなどから始めてみましょう。
- 痛みが強いときは無理に動かさない
- 痛みが増す動作やストレッチは避ける
- 身体の状態に合わせて、少しずつ活動量を戻す
- 痛みが落ち着いてから、必要に応じて股関節の運動を取り入れる
急に脚の力が入りにくくなった場合、股の周囲の感覚が鈍くなった場合、尿や便が出にくい・漏れるなどの症状がある場合は、緊急性の高い神経の障害が疑われます。すぐに救急医療機関を受診してください。発熱や強い外傷を伴う場合なども、早めに医療機関で評価を受けましょう。
ぎっくり腰でお悩みの方へ
ぎっくり腰では、痛みのある腰だけでなく、股関節の動きや太ももの筋肉、日常生活での動作なども確認することが大切です。
急な腰痛でお困りの方は、自己判断で無理に動かしたり、痛みを我慢し続けたりせず、医療機関や専門家にご相談ください。





















