
「フットサルをするとアキレス腱が痛い」
「走るとアキレス腱が痛む」
「つま先立ちをすると痛い」
このような症状でお悩みではありませんか?
今回は、当院で実際に経験したアキレス腱付着部の痛みの症例をもとに、フットサルなどの切り返し動作と、股関節・膝関節の動きについて解説します。
今回の症例
40代女性、デスクワークをされている方で、2週間に1回程度フットサルをされていました。
主な症状は、右アキレス腱の踵への付着部付近の痛みです。
特につらかったのは、
・走ると痛い
・つま先立ちをすると痛い
・フットサルをすると痛みが出る
という症状でした。
発症したのはフットサルをした翌日からでした。
患者様にとって一番困っていたのは、好きなフットサルをすると痛みが出てしまい、思うようにプレーできないことでした。
どのように評価したのか?
まず、患部の状態や足関節の可動域を確認し、**Thompson test(トンプソンテスト)**などを行いました。
また、足関節を動かした際の痛みについても確認しました。
今回の症例では、アキレス腱の付着部周辺に痛みがあり、特に足関節を動かした際に症状が強くなる状態でした。
Thompson testは陰性でした。
これらの所見を総合し、今回の症例ではアキレス腱付着部周辺の症状が考えられる状態と判断しました。
ただし、Thompson testが陰性だからといって、アキレス腱に関するすべての問題を否定できるわけではありません。症状や経過、その他の検査結果を合わせて判断することが重要です。
フットサルの「切り返し」はアキレス腱に負担がかかる?
フットサルやサッカーでは、走るだけでなく、急停止や加速、方向転換、切り返しなど、さまざまな動作を繰り返します。
特に方向転換では、短時間で大きな力を地面に伝えながら身体の向きを変える必要があります。
サッカー選手の方向転換動作を調べた研究でも、切り返しの角度や使用する脚によって、下肢の筋力や動作の特徴が変化することが報告されています。
また、プロサッカー選手のアキレス腱断裂を分析した研究では、加速やクロスオーバーの切り返し、ジャンプなどの場面でアキレス腱に大きな負荷が加わるパターンが確認されています。
もちろん、今回の症例は「アキレス腱炎」であり、これらの研究は主にアキレス腱断裂やスポーツ動作を扱ったものです。
そのため、「切り返しがアキレス腱炎の直接的な原因」と断定することはできません。
しかし、フットサルのように走る・止まる・切り返す動作を繰り返す競技では、アキレス腱に繰り返し負荷がかかることを考慮する必要があります。
アキレス腱だけを見るのではなく、股関節や膝も確認
今回の症例で重要だと感じたのが、患部だけではなく、股関節や膝関節を含めて身体全体の動きを確認することです。
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉と足部をつなぎ、歩行やランニング、ジャンプなどで力を伝える重要な組織です。
そのため、走る・止まる・切り返すといった動作では、足首だけでなく、膝や股関節を含めた下肢全体の協調した動きが必要になります。
実際に、アキレス腱症のあるランナーでは、股関節の運動学に違いがみられたという研究があります。ただし、この研究は「股関節の動きがアキレス腱症を引き起こした」と証明したものではなく、症状による変化なのか、発症に関係する要因なのかは明らかではありません。
また、股関節の外転・外旋・伸展筋力が低下していたアキレス腱症のアスリートを対象とした研究もあります。
一方、近年のシステマティックレビューでは、アキレス腱症のある人とない人で股関節内旋可動域に明確な差があるとはいえないという結果も報告されています。
つまり、「股関節が硬い=アキレス腱に負担がかかる」と単純に考えるのではなく、股関節の可動域・筋力・膝・足関節・動作を総合的に評価することが大切だと考えています。
今回はどのような施術を行った?
初回は痛みが強かったため、患部に過度な負担をかけないようにしながら、物理療法などを用いて対応しました。
さらに、足関節の可動域を確認しながら、周囲の筋肉に対する施術や関節の動きを整えるアプローチを行いました。
施術後には、少しずつ痛みが軽減し、足関節の動きにも変化がみられました。
2回目以降も、歩行やつま先立ちでは痛みが残っていましたが、施術を継続する中で徐々に症状が落ち着いていきました。
最終的には、フットサルをしても痛みが出なくなり、日常生活で歩く際にも気にならない状態になりました。
アキレス腱の症状では「痛みを取る」だけでなく動作を見る
アキレス腱の痛みがあると、どうしても痛い場所だけに注目してしまいます。
しかし、今回の症例を通して、競技復帰を考えるのであれば、
・足関節の可動域
・ふくらはぎの状態
・膝関節の動き
・股関節の可動域や筋力
・走る動作
・切り返し動作
などを確認することも大切だと感じました。
特にフットサルやサッカーのように、方向転換を繰り返す競技では、身体全体をどのように使っているのかを確認することが重要です。
アキレス腱の痛みでスポーツを続けたい方へ
アキレス腱の症状では、痛みがある状態で無理に走ったり、繰り返し強い負荷をかけたりすることは避ける必要があります。
一方で、症状が落ち着いてきた段階では、状態に合わせて運動や負荷を徐々に戻していくことが重要です。
アキレス腱付着部症に対する保存療法については、運動療法や衝撃波療法などが研究されていますが、特定の方法がすべての患者様に最適とはいえず、症状や状態に応じた対応が必要です。
「フットサルを続けたいけれど、アキレス腱が痛い」
「走ると踵の上が痛む」
「つま先立ちをすると痛い」
このような症状がある場合は、無理をせず一度専門家にご相談ください。
今回の症例から私たちが感じたことは、アキレス腱の痛みは患部だけを見るのではなく、股関節・膝・足関節を含めた身体全体の動きや、実際のスポーツ動作まで考えることが大切ということです。
参考文献
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(3)Ferreira, Victor M L M et al. “Achilles tendinopathy physical impairments evaluated through clinician-friendly measures: a systematic review with meta-analysis and GRADE recommendations.” Brazilian journal of physical therapy vol. 29,4 (2025): 101212. doi:10.1016/j.bjpt.2025.101212
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(4)van der Vlist, Arco C et al. “Which treatment is most effective for patients with Achilles tendinopathy? A living systematic review with network meta-analysis of 29 randomised controlled trials.” British journal of sports medicine vol. 55,5 (2021): 249-256. doi:10.1136/bjsports-2019-101872
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(5)Wiegerinck, J I et al. “Treatment for insertional Achilles tendinopathy: a systematic review.” Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA vol. 21,6 (2013): 1345-55. doi:10.1007/s00167-012-2219-8
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