はじめに
今回は、実際に当院へ来院された高校生・野球部のピッチャーの症例をご紹介します。
最初は「シンスプリント(内側脛骨ストレス症候群)」の可能性を考えて評価・施術を行いましたが、症状の経過や痛みの場所などから疲労骨折の可能性も考え、医療機関でMRI検査を受けていただいたところ、疲労骨折と診断された症例です。
この症例を通して、スポーツをしている学生に起こる下腿の痛みについて、どのような点に注意する必要があるのかをお伝えします。
今回の患者様
今回の患者様は、
高校生の男性で、野球部のピッチャー
をしている方でした。
約2か月前から下腿の内側に痛みがあり、徐々に症状が強くなっていました。
特に、
- トレーニング後
- ピッチング後
- 走った後
などに痛みが強くなる状態でした。
さらに、運動しているときだけではなく、何もしていない状態でも痛みを感じるようになっていました。
シンスプリントとは?
スポーツをしている方の「すねの内側の痛み」で比較的よく知られているものに、**シンスプリント(内側脛骨ストレス症候群)**があります。
ランニングやジャンプなど、繰り返し下腿へ負荷が加わることで、脛骨の内側に痛みが生じる状態です。
一方で、スポーツによる下腿の痛みには、シンスプリントだけではなく、
疲労骨折など、別の原因が隠れている可能性もあります。
そのため、「スポーツをしているからシンスプリントだろう」と最初から決めつけないことが重要です。
今回、どのような評価を行ったのか?
まず、症状の出ている部位や痛みの状態を確認しました。
その後、
- 足関節の動き
- 股関節の動き
- 膝関節の動き
など、下肢全体の状態を確認しました。
また、局所の圧痛や各種テストを行い、どのような刺激で症状が出るのかを確認しました。
今回の症例では、下腿の内側の限局した部位に圧痛がみられました。
一方で、神経症状などは特に確認されませんでした。
なぜ疲労骨折を疑ったのか?
評価を進める中で、もともとシンスプリントの可能性が考えられました。
しかし、今回特に気になったのが、
「痛みが広い範囲ではなく、1か所に限局していたこと」
です。
シンスプリントと疲労骨折は、どちらもスポーツによる下腿痛として現れることがあります。
そのため、症状だけで両者を完全に区別することは簡単ではありません。
研究では、シンスプリントでは脛骨の内側に比較的広い範囲で圧痛がみられる一方、疲労骨折ではより局所的な骨の痛みがみられることがあり、MRIによって両者を鑑別できる可能性が示されています。
今回も、
「シンスプリントだけでは説明しきれないのではないか」
という視点を持ち、疲労骨折の可能性を考えました。
実際に行った施術
初回の施術では、痛みが強く、局所に熱感も確認されたため、刺激を強くしすぎないことを優先しました。
具体的には、
- 後脛骨筋周辺への軽いアプローチ
- マイクロカレント
- 強い指圧を避けた施術
などを行いました。
今回、強い指圧を行わなかったのは、痛みが強く、熱感もあったため、まず患部への刺激をできるだけ抑えることを優先したためです。
また、下腿の内側に症状が集中していたため、その周辺の状態を確認しながらアプローチしました。
施術後の変化
施術前後で痛みを確認したところ、
施術後には痛みが少し軽減しました。
しかし、
大きく痛みが変化したわけではありませんでした。
この点も今回の症例では重要でした。
「痛みが少し減ったから、筋肉の問題だろう」
と判断して終わらせるのではなく、症状の経過や圧痛の場所などを含めて、さらに原因を考える必要がありました。
その後、MRI検査へ
今回の症例では、疲労骨折の可能性を考え、医療機関でMRI検査を受けていただきました。
その結果、
疲労骨折と診断されました。
若年アスリートの疲労骨折では、初期の画像検査だけでは判断が難しいケースもあります。
特にMRIは、疲労骨折の早期評価に有用な検査として知られています。
そのため、スポーツをしている学生で、
- 痛みが長期間続いている
- 徐々に痛みが強くなっている
- 運動後に痛みが強くなる
- 局所的な圧痛がある
- 安静時にも痛みがある
といった場合には、疲労骨折の可能性も考慮することが大切です。
最終的には野球を続けられる状態に
今回の患者様は、最終的に現在も多少の痛みは残っているものの、投球を行うことができ、部活動でもプレーを続けています。
ただし、疲労骨折の場合は、部活動を続けながら無理に痛みを我慢することが適切とは限りません。
疲労骨折から競技へ復帰する際には、痛みや骨の状態、筋力、競技動作などを確認しながら、段階的に負荷を戻していくことが重要とされています。
今回の症例から学んだこと
今回の症例を通して、私たちが特に重要だと感じたのは、
「シンスプリントと疲労骨折を症状だけで判断することの難しさ」
です。
スポーツをしている学生の下腿痛では、シンスプリントが疑われることがあります。
しかし、
「シンスプリントだろう」と最初から決めつけてしまうと、別の疾患を見逃す可能性があります。
今回も、もともとシンスプリントの可能性を考えていましたが、
「痛みが一か所に集中している」
「症状が2か月続いている」
「徐々に痛みが強くなっている」
「安静時にも痛みがある」
といった情報を総合して、疲労骨折の可能性を考えることができました。
痛みを取ることだけを目的にしない
今回、もう一つ大切だと感じたことがあります。
それは、
「痛みを取ろうとして、無理に強い刺激を加えないこと」
です。
痛みが強く、熱感もある状態であれば、
「もっと強く押せば痛みが取れる」
とは限りません。
むしろ、まずは安全性を重視し、現在の状態を正しく評価することが重要です。
施術者としては、
「どのような施術をするか」
だけではなく、
「今、この患者様に強い刺激を加えてよい状態なのか?」
を考える必要があります。
スポーツをしている学生の「すねの痛み」は我慢しないでください
高校生など、成長期にスポーツをしている方は、練習量やトレーニング量が増えることで身体への負担が大きくなることがあります。
実際、20歳未満の若年アスリートを対象とした研究では、疲労骨折の発生部位として脛骨が多く、16歳前後で発生がピークとなったことが報告されています。また、高校生では練習頻度が高い傾向も報告されています。
だからこそ、
「部活だから仕方ない」
「シンスプリントだから我慢すればいい」
と考えず、痛みが続く場合には一度身体の状態を確認することが大切です。
まとめ
今回の症例からお伝えしたいポイントは5つです。
① スポーツによる下腿の痛みには、シンスプリントだけでなく疲労骨折などの可能性もあります。
② 痛みが長期間続く、徐々に強くなる、局所的な圧痛がある場合には注意が必要です。
③ シンスプリントと疲労骨折は症状が似ているため、必要に応じて医療機関での画像検査が重要になります。
④ MRIは疲労骨折の評価に有用な検査の一つです。
⑤ 痛みを取ることだけを優先せず、安全性を考えて評価・施術することが大切です。
今回の症例は、私たち施術者にとっても、
「症状を決めつけず、常に別の可能性を考えること」
の重要性を改めて感じた症例でした。
スポーツをしている学生で、すねの痛みがなかなか改善しない場合は、痛みを我慢して練習を続けるのではなく、まずは専門家に相談することをおすすめします。
参考文献
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